面白かった米音楽市場

米国の音楽レコード市場が7年ぶりに前年比増と明るいニュースに加えて、デジタル媒体のシェアが50.3%と待望のフィジカル媒体超え*1というマイルストーンの達成。その他あれこれもあり、2011年の米国音楽市場はとても意義のある年になったのではないかと思います。ネットユーザーやアナリストらがどう解釈・扱っていくのかはさておき…というか反響あんまなくて肩透かしなんだけど*2、とりあえず自分が思ったことをつらつらとー。

売上の回復に関して、最大要因は米国の個人消費の力強さに支えられたことだと思います。事実、2011年の感謝祭における売上は好調、自動車販売なども上々でした。米国民の財布が緩かったことは間違いなく、その追い風を受けることが出来たのでしょう。ただし同じ娯楽産業である映画は興行・パッケージともにマイナス成長でした。この原因としては、レンタル産業の多様化*3やインターネットでの動画視聴の増加*4が影響したのでしょうね。特に双方は「割安」ということで共通しており、セル市場が「心的」にも割を食ったことは容易に推察できる*5。これは音楽にも言える関係なのだけど、今となっては懐かしい話みたいなー。
「7年ぶり」ということからも分かるように、売上はずーっと下がり続けていた。しかも、7年前=2004年のプラス成長はその1年限りで、それ以前は4年の減少を続けていた。「そりゃ、たまには下げ止まりもする」かもしれないし、そもそも10年も減少していれば、市場に占める固定層が濃くなっていくはずなので下げ止まる要素が高くなっていたはず。そういう下地に今回の好景気が結びついただろうと解釈しました。そしてその下地が本当にあるのならば、今年以降の米国レコード市場は「横ばい」という新局面に移っていい頃合だと思うー。でも、もうちょっとかかるかなー。

さて2011年は多くのヒットに恵まれていた年でした。ガガ様やビーバー君らのポップアイコン、予想GUYなブーブレ、安定株の黒人勢やカントリー勢など順調でしたが、何よりもアデルの躍進が象徴でした。2011年1月にリリースされたアルバムが1年経った今も週間売り上げのトップ争いをしている。なんぞこれ。そしてそれはネットなどの新しいツールがもたらしたものではなく、エアプレイなどの古いシステムがもたらしたと言うのだから事実は小説よりも奇なりという他ない。社会学経営学の権威が論文書いても恥ずかしくない題材じゃネ?(gdgd妖精sっぽい発音で) 2011年に一番売れたアデルの売上げは2位にダブルスコアの差をつける決着になったのだが、このダブルスコア決着は先述の2004年以来だとか。なるほど、やはり大ヒットあってこそ市場の活況ありということなのね。他のヒット作には「ええじゃないか」なLMFAOがありました。恋のマカレナみたいなのは不定期ながらも出て来るなー。
そのLMFAOで面白いのはシングル*6はあれだけバカに売れまくったのにアルバムはホントさっぱりだったことで、まぁLMFAOに恋のマカレナを想起したようにアルバム売れないのはキャラ的に納得するんだけども。ただ、00年代半ばからデジタルの売上が本格的にシングルチャートに反映*7されていくようになって、この手の乖離現象みたいなのが増えた印象があるなー。
新しい要素が反映されたのだし、従って変化は当然なんだけども、ギョーカイがシングル市場を意識した戦略を始めたんじゃないかな? ただでさえ市場縮小やチェリーピック*8で困ってんだし。アルバムという縛りに囚われない制作やリリースはますます増えていくんじゃないかな。昨今のモバイル時代においても「手軽さ」って重要になってるしね。あと、テレビの活用って雰囲気もあるかな。ナイトショーみたいなのは昔からあるけど、00年代からの象徴の一つであるリアリティショー*9なんかとは相性抜群で、実際チャートに効果が現れてる。アメリカの音楽シーンはタイアップ的なシングル戦略がどんどん増えて、日本っぽくなっていく*10んじゃないかな。まぁ米国の場合、サブスクリプション方式をどうしていくかでシナリオが変わってくるんだろうけどねー。

*1:ただフィジカルが下がりに下がったおかげなので手応えは薄い?

*2:でも俺はCDオワタとか言う人を肴にして(・∀・)ニヤニヤしたい!!

*3:特にRedboxやBlockbuster

*4:NetflixiTunesなどの合法は勿論、YouTubeなどの無許諾な違法視聴も含む

*5:その浮いた分が音楽に流れてきた可能性もある

*6:CDではなく着うたやiTunes/Moraの様な1曲販売

*7:それ以前はラジオのエアプレイが順位を決める主要素だった

*8:チェリーピックは折込済だろうから、逆チェリーが本当の問題だろうけどね

*9:アメリカンアイドルなどのオーディション系

*10:シングルを重視することの是非は別として