さすが菊花賞、格が違う

前半かかり気味なのは我慢出来るとして、ローズキングダムをマークしているままのアンカツを見て「何がしたいんだ、どんな判断だ、俺の金がドブに捨てられた!」とレース途中で諦めました。きっとこのレースを観戦していたであろう休養中なノリさんは何を思ったのだろうか。
荒れるという代名詞に応えるかの様に、菊花賞は斜め上を魅せてくれた。「ビッグウィーク(川田)はコスモラピュタを行かせると下手に抑えそう」と、ここまでは読んでいたんだよなぁ。ただこの見立ては「コスモラピュタが一頭離して、後ろは団子」という展開図であって、まさか後続が川田ウィークに合わせて縦長展開を形成する事になるなんて思いもしなかった。(引きつった)笑いが止まらない。しっかしクラシックの大一番がこの内容ってのはガッカリ*1。「戦犯と挙げろ!」言うのなら、それはまさしく川田騎手本人なんだろうし、しかし勝ったのはその川田騎手な訳で、まさに独り相撲な菊花賞であったと評価する。んー、あのスプリンターズS(エス)の幻滅から自分は学ぶべきだったんだろうねぇ。さすれば、このグダグダ展開を読み切る事もさもありなん…。


予想通りコスモラピュタが逃げて平均ペースを刻む。向正面に入ってからの中盤は例年同様の教科書通りにペースを落とす展開。そして何故か縦長の展開が形成されるw 終盤、コスモラピュタは流石に淀の長丁場を意識したのか、いつもの超ロングな5Fスパートをせずに1F我慢した。この1Fの違い、コスモラピュタ自身は4Fスパートでも直線半ばで脚が止まっていたので、早仕掛けしたところで何が変わるんだと言う話ではあれど、レース展開が前残りを許してしまった要因としては大きかったと思う。
そのコスモラピュタの二番手にビッグウィーク。「瞬発力勝負の流れは避けて持続力を活かした競馬をしたかった〜」なんて川田騎手はコメントしたそうだが、こっちからすれば「えっ?」である。スタートから振り返ってみる。好スタートを決めたビッグウィークは前半行きたがっていた。川田騎手はそれを抑えようとする。しかしコスモラピュタが作ったペースは平均&入りの3Fは36.5秒でやや遅い。内枠で好スタートを決めたビッグウィークが行きたがるのは無理もないし、無理に抑える必要性は無かっただろう。向正面に入ってもコスモラピュタを行かせ、自身は抑えて縦長の競馬を作ってしまっている。そして仕掛けていったのはコスモラピュタより遅い4コーナー手前から。とてもじゃないが瞬発力勝負を嫌った騎手の乗り方ではない。なのにあんな回顧をされては苦笑いするしかない。
〜と指摘してみるのだが、じゃあ積極的な乗り方で3分5秒前後の決着だった場合どうなるの?と問われれば、そこにビッグウィークの勝利が保証される訳ではない*2ので勝てば官軍、結果オーライなのだ。逆にドスローとなっていた場合、間違いなく負けていただろう。ビッグウィークは神戸新聞杯で典型的なヨーイドンの展開を作っているが、この時の上がり3Fは34.1秒。今回の菊花賞は34.4秒でまとめているのだが、おそらくドスローにしたとしても34秒を切ることは無かっただろう。一方でローズキングダムは33秒を切ってくることは十分ありえただろうし、後続との距離が詰まりやすくなる分、簡単に差されていたと自分は考える。つまりビッグウィーク&川田が勝つ為には、「先行馬にお釣りが残るくらいのちょっと平均より緩いペース」でかつ「後続とはある程度の距離を確保」の特異な条件下だった訳で、人馬はその最高の競馬をしたと言える。「二番手の馬がレース展開を作る」とはよく言ったもので、後続のライバル達はこのヒューマンエラー*3な術中にまんまと嵌ってしまったね。ビッグウィークでG1二勝目をあげた川田騎手のG1初勝利はキャプテントゥーレ皐月賞。そう言えば、この皐月賞もあれよあれよという今回と似たようなレースだったと記憶している。何か縁でもあるのかもしれない。
さて、ビッグウィークはこれからが大変。歴代の中でも相当恵まれた勝ち方をしてしまったのだから。あくまで楽な勝ち方をしただけで、それが馬の能力を絶対的に示すものではないが、G1ホースに相応しい結果をこれから出していかなければならないだろう。でなければ、ラキ珍と言われてしまうことになるのだから。


2着に入ったローズキングダムはさすがの貫禄と言ったところか。ネットや某柏木から非難轟々な武騎手の乗り方だが、個人的にはそんなに悪くなかったと思う。スタミナ自慢の馬では無い以上、長丁場では無理をせず中団後ろで確実な末脚を温存、有力2頭のヒルノダムールとトウカイメロディを見ながら直線は外から差すという、形自体は理想的なものだったはず。武騎手にとって、レース中で幸運だったのは、トウカイメロディの行きっぷりがとにかく悪かったこと。そしてヒルノダムールが仕掛けていきたい3角で競馬にならなかったこと。しかし同時に不幸だったのは、この有力2頭の不幸を簡単に目視出来るるポジショニングをしていたことでしょうか。これが無ければ、もう少し積極的な仕掛けになって結果が違っていたのかもしれませんね。今後の路線はどうなるんでしょうかねー。1600〜2000m向きだと思うのだけど、中長距離で中途半端に結果出したことで、ドリームジャーニーの様なローテになるんでしょうか?
トウカイメロディ、敵だと見ていた瞬発力勝負の流れになったことが敗因なんでしょう。挽回ありと見ていたシルクオールディも然りかと。天皇賞春は今日の様にはいかないでしょうからそこでの巻き返しに期待したいです。ヒルノダムールは勿体無いレース運びで、藤田騎手はもう少し何とかしてやれたのではと。相手関係考えたら自分で動いても問題なかったと思うんですが。グダグダな菊花賞の中、唯一光っていたのは藤岡(笑)騎手のクォークスター。他力本願な面が多分にあるけども、セントライト記念菊花賞に双方において強力な末脚を見せたのは濃い内容だったと思う。10世代はエイシンフラッシュヴィクトワールピサローズキングダムの3強だと思うのですが、4強とするならペルーサよりもクォークスターの方が上かもしれませんよ。JCに出てくるのならば惑星として是非とも注目したい一頭。


「長距離戦は騎手で買え」という言葉がある。今回の菊花賞、外国人ジョッキーが居ないのはいいとして、岩田康誠横山典弘を負傷で欠き、リーディング上位の蛯名正義松岡正海内田博幸も居ないという寂しい面々だったと思う。18頭が歪な展開で硬直してしまったのは、こういう面もあったんじゃないかろうか。個人的な妄想だけど、もし俺の角田が引退してなくてビートブラックに乗ってたら、ヒシミラクルよりは控えめな坂の手前からの6Fスパートをしてただろうし、リリエンタールに予定通りノリさんが乗ってたら溜まらず玉砕しに行って、レース後に催される騎手イベントの回顧コーナーで「だって誰か行かなきゃどうしようもないじゃん!」と場内の笑いを誘ってくれたんだと思う。

*1:エイシンフラッシュのダービーより酷いと思う

*2:多分、負けていただろう

*3:無意識というか天然というか