Huluの件


まぁ何というか、やっぱりかというか、やっぱりというのは「Hulu買われたか」ということではなくて、世間の反応のこと。世間というよりはネット世間となるが、とにかく彼らにはあんまり歓迎されていない。想定内すぎる。


Huluジャパンの日テレへの売却は正しい方向にあると思う。本国でイマイチだからとかフェードアウトとかそういう側面もあるだろうが、それがあろうとなかろうと、市場での成功、特に対NetflixAmazonなどを考慮した「日本市場を先に抑える」という目標の為には不可避な方向性じゃないかな。
既に米国ではNetflixが定額制動画配信(SVOD)市場で寡占じみた巨大シェアを持っているが、彼らがここまで大きくなれたのは、Netflixが以前からやっているレンタルビデオ事業での主役コンテンツである映画コンテンツの充実ではなく、テレビ番組を重視してきたことにある。SVODユーザーが映画よりもテレビ番組を楽しんでいるのは既に米国での調査で明らかにされてもいる。Netflixがなぜテレビコンテンツを重視してきたかというと、まずハリウッドがNetflixのSVODに映画コンテンツを易々と提供しない、またはNetflixが金を出さない為。一般的に映画ビジネスで「劇場公開→BD/DVD販売→BD/DVDレンタル→テレビ放送」という各期間があるのは誰しもが慣れ親しんでいると思うのだけど、SVODにおいての映画コンテンツの取扱い開始はテレビ放送と同じか近いタイミングに置かれます。Huluに対して日本のユーザーの「新作が全然ないじゃん、TSUTAYAやGEOではもう出てるのに」という不評があるが、それはSVODビジネスのデフォだから仕方ないんです。だからこそNetflixはSVODサービスを開始させた後に、動画コンテンツの充実にテレビ番組を獲得する方向性にシフトさせ、それによって会員数を急増させた。今ではNetflix自身がオリジナル番組を制作するまでに至っている。要するにNetflixのSVODというのは、TSUTAYAなんかのレンタルビデオの領域にあるものではなく、スカパーやWOWOWの領域にあるものと解釈するのが手っ取り早いと思う。で、この成功システムが世に示されたからこそ、日本のHuluは昨年にTBSとの提携でテレビ番組の充実を図ろうとしていた訳だ。


ただ、Huluはあくまでハリウッド側によって作られたもので、日本側にとってはどうしても敵対というか外様勢力になってしまう。この感覚は不評を買うだろうけど、ビジネスというのはそんなもんで、イニシアチブの有り様って凄く大事なんです。もしHuluが日本のテレビ局に大きな利益を生み出せる存在であればいいのだが、実際はそうでない。あの米国ですら未だCATVが圧倒的でSVODはそうでない。そんな中、コードカッティングという中長期の懸念がされてもいる訳で、日本のテレビ局がSVODを警戒するのは無理もない。それでもハリウッドが映画を中心とした分野で昔から日本に根付いていたからこそ、Huluは日本でのサービスを先駆けて開始することが出来たのだと思う。だがSVODの完全なる成長や成功を目指す、つまりマス化にとって日本のテレビコンテンツは必須となる。その為にHuluジャパンの「非ハリウッド化=身内化」というプロセスは大変重要であるように思う。それはHulu自身の為だけでなく、ユーザーにとっても番組の増加というメリットになるはず。まぁ今のHuluユーザーは海外コンテンツ志向だろうから「日本の番組とかいらんわ」「日本のテレビ局は全部潰れてOK」なんだろうけどさ。
あとは…まぁ日テレの丸のみってのはちょっとね。日テレは去年のJoinTVとか割と攻めている局なので、今回も攻めてみたんだろうけど、そもそも「アンタら日テレオンデマンドあるじゃねーか」って話だしね。遠くない将来、他局と資本提携などしてくれればいいんだけども。理想的なのは着うたの様な形だろうか。


そう言えば、最近ネット世間ではSpotifyの日本サービスどうなるかについての話題が高まっているように思えるが、Spotifyが日本参入する為のハードル、または「何で日本でやれないんだ」について色々語られ、大抵は邦楽ギョーカイ叩きになるのだけど、このエントリで述べた「身内化」という観点がさほど語られてないのは残念だと思う。Spotifyのサービスが世界的に広がったのは、Spotifyがメジャーレーベル(Universal&Sony&Warner)に対して、「身内化」を行ったからに他ならない。だからこそレーベルは楽曲をSpotifyに提供しサービスの発展を後押しする…というかせざるを得ない立場になった。それまで彼らは「Spotify許すまじ」だったからね。これはHuluの今回の話とどこか通ずる部分があるように思う。